人権擁護法案について(その3):消極的自由についての消極的見解
なんだか個別具体的って言いながら前回は全然法案に踏み込まなかったので、今回は逐条解説でもしながら、人権保護の法制自体がいらないって言ってるわけじゃぁ無いんだっていうことでもしようかねぇ、今回は、そんなお話。
と、思ってたんだけど、法案の解説については、かなり詳しく、また分かりやすく書いてるサイトを見つけたので(当代江北日記経由、ココね)、そこを参照してもらうとして、しかし、法案の解釈、および対案については同意しつつも、なお問題があるだろうと思うことについて、述べてみようかと思う。 今回は、そういうお話にする。
ただ、文句はつけさせてもらうけれど、全体の話は紹介したサイトの人に賛成なんよ。 人権保護の必要というのはあるだろうと思うし、そのための法制も、やっぱり必要だろうとは思うんだ。 そして、「人権侵害の救済」と「マスコミ規制」を分離させ、人権委員会を法務省から独立(というか、政府から独立)の機関として設置、アイヌ、琉球人、マジョリティ、在日、被差別部落、その他を含むような人権委員会にするべきだ、というところまで、ほぼ全面的に賛成なんだわ。
ま、もう少し言うと、一人、あるいは特定の人に集中しないように、任期を短く(1年ぐらい)区切ったほうが良いとは思うけど。
しかし、そうは言っても、と思うのは、まず第1点、
"法律の厳格な適用という解決策は、失敗するだろう"
というのと、もう一つは
"積極的自由と消極的自由を分けて考えているようだが、その区別をする必要が、果たしてあるだろうか?"
ということなんだよね。
ということで、以下かなりややこしい話になるけれど、まぁ適当にお付き合い願えたらね、と思います。
うむうむ、やはり若い人はいいのぉ、法律にかいておれば、全てが厳格に適用できると思っておられる。
というのが、私の感想なわけだが、もう一度繰り返させてもらうと、
日本の司法システムというのは、法律にかいてあったからって、その通りに適用されるわけではなく、解釈と適用の幅がかなりある。
という事を忘れておられる、あるいはあまり考えていないのではないかなとみえる。
もう少し具体的にしてみよう、なぜにこんなことを言うのか、というと、RIR6氏の考えておられる(正確には同氏は民主党の法案に賛成のご様子で、法務省のQ&Aにそって、法案から反論しているのだがそれはともかく)
"法案の厳格な適用で恣意的な人選、および適用が免れる。"
というのを認めるとすると、例えば警察、公安等が
"法務省が法の厳格化を認めたのだから、道路交通法、および銃刀法などを厳格に適用させてもらいます。"
と言い出すのを、妨げることができなくなるんだよねぇ。
だって、一つの法律だけを厳格に適用するっていう話にはならないはずだからね。
つまり、この法案の問題というよりは、厳格化を認めることによる、現在の社会システムそのものへの影響、を心配するわけだね。
しかも、日本の法律というのは、かなりあいまいな部分を残したまま作られているものがほとんどであるので、厳格化を認めることは、結果として権力の暴走を招くのではないか?
という疑問を払拭することができないわけだ。
さらに、もっと言うと"厳格に適用しなければ恣意的な利用ができる余地がある"っていうことなんだよね、まず人権委員会の「学識経験、法律知識、云々」というところ一つ取ったって、"それを誰が判定するのか?"というところが
「創氏改名は朝鮮人のほうが望んでやった」(By 麻生太郎:この人総務大臣だよね)
「日本は天皇を中心とする神の国であって~」(By 森喜郎:この人なんか総理大臣の時にこの発言をしてる)
なんてのがコロコロしてる「国会の承認を経て、総理大臣がこれを認定する」んだよー、まともでない学識経験者、法律家を選んでしまう確率は、法務省の想定しているよりもかなり高まるとみたほうがいいんじゃないかねぇ。
そして2点目、消極的自由と積極的自由について、こちらのほうも、逃避日記の記事なんかにも書いてあるが、ちょっと違う例を出すと、
"ナチスドイツですら、ポーランド侵攻の際は「ポーランドにいるドイツ人同胞の人権を守ろう」という、ある意味積極的自由を装った文言で国内世論を形成した。"
という事実をあまり考えていないんじゃないかねぇ。
また、「発言を妨げられない自由」によって、「発言をする自由」が奪われるという言いかたをすると分かってもらえると思うんだけど、この2者をどうやって区別するのかがどうしたって分からなくなるんだわ。
もう少し言うと、
マイノリティだから、差別されることがどういうことかを分かっているから、「発言を妨げられない自由」が奪われなかったときに差別的発言をしないとは限らない。
私はこれをマイノリティのマジョリティ化と呼んでるんだけど、いちばん簡単な例はイスラエルだろうかね。
ということで、全体的に言うと、RIR6氏は"国のシステムなんか本当は信用しない"といいながら、国のシステムを信用しているように見えるんだよね(何度も繰り返すけれど、同氏は分かった上で法務省が法案を盾にとって反論してきたときにどうするのかということを言ってるんだけど)。
法律を適用、執行するのは役人なんだから、前回のエッセイにも書いたけど、"部落"という言葉を消せば、差別は"なかったこと"にできるんだ、というようなメンタリティの官僚に、まともな執行ができるとは思えないんだけどねぇ。
簡単に言うと"システムがきちんと整ってれば、厳密にまわせば回るんだ"って言うのは私に言わせると
"厳密にまわさなならんようなシステムは、そもそも人がまわすことを考えておらず、回らない"って事なんだけど。
(「人間が、いません -ホゲ教新聞」ってか、ま、これは冗談として)
もちろん、このようなことは踏まえた上で、法律の成立後に"厳格な適用を求める"のと"官僚のコントロール"で対処しようという、宮台氏みたいな立場で、RIR6氏は言っているんだろうとは思うんだけど。
この辺は好みの問題だからねぇ、私の好きな中国思想的に言うと韓非子に対する荀子の立場というか、西洋思想的に言うとルーマンに対するブルデューとかハーバーマスの立場というか。
で、もう一つ、私が条文にほとんど触れずにこういったロジックを組み立てるのは、"一般のおばちゃん(および一般のオバチャンレベルの国会議員)にこれを説明するとき"を想定しているんだよね。
今の国会議員の力のある人たちって、法律を読む力が、本当にあるかどうか疑問だしねぇ。
だからわざわざ、"差別利権反対"とかいって現状の差別を容認しようという、いけ好かない連中の議論に乗ったふりをしながら、途中から修正していくっていう文章を前回は書いてみたんだけど、どうだろうね。
ま、しかし、"人権委員会が法務省の外局に作られるのが問題だ"というシステム上の場所の問題を前回ネグったのは私のミスだったね。
と、見も知らん人に対する私信のような内容になってしまったが、RIR6氏はとても若いんだし、しっかりした対案も出しているみたいなんで、がんばってもらいたいもんだねぇ。
以上、今回のお話は、ここまで。
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