2006年4月23日 (日)

独島危機

中国の隣国、日本と韓国で一触即発の危機が…ひとまずは収まったようです。

今回は4月21日付け『新京報』に掲載された、三力なる人物の「独島危機は東アジア安全の脆弱性を暴露した」という文章を一部ご紹介します。

韓日で島嶼の主権争いが今日のこのような程度まで発展したのも、韓国だけでなく、東北アジア全域の安全保障上の脆弱性を表している。ヨーロッパがすでにいわゆる「ポスト近代社会」の段階に入り、領土・領海問題が非常に少なくなり、伝統的主権概念がすでに相当薄くなって、相互に主権業務を分担して行うことが可能になった状況と比べ、東アジア世界は近年、伝統的な主権問題によって紛争が度々起こっている。伝統的主権、海洋権益、その他の安全保障上の問題があちこちで発生しているこの時機、東アジア世界の共同の安全保障システムの建設は、明らかに非常に不足している。

ヨーロッパ世界と違いは、現在の東アジア世界はそれ自身について言えば、全体的に特殊な歴史の段階に位置しているということだ。19世紀半ば以来、被植民地化され、20世紀半ば以降、普遍的に国家解放を獲得、および20世紀後半以来、普遍的に経済発展を遂げた後、大部分の東アジア国家は現在、近代国民国家の意義上での主体の覚醒が発生したばかりの段階にある。アイデンティティが強化されている現在、伝統的に冷戦と二極構造によってコントロールされてきた民族意識と主権、権益の争いは、外部の力を借りることによって引き続きコントロールすることはできなくなっている。東アジアの未来はますます東アジア国家自身によって決定されることになる。これはある面で東アジア世界の文明復興のための条件を提供しているが、そこに隠されたリスクもかつてよりはるかに大きくなっている。

東アジアはすでに「成長期」に入っており、これから「成熟期」に向かうことになる。東アジアの安全問題には新思考が必要である。やはり、それは主に東アジア国家自身によって創造されるべきだろう。この点について言えば、次の二つのことによって決まるだろう。一つは東アジア国家の自制である。島嶼とその他の主権、権益争いが話し合いによって、ある種の解決に達する可能性はないのだろうか。常に悲観的にこの問題を見る必要はない。実際、同じく東アジア国家である東南アジア国家間でも、いまだに激烈な島嶼主権の争いが度々発生している。シンガポールとマレーシア、マレーシアとインドネシアでは、過去2、3年の間に顔や耳を真っ赤にして争い、もう少しで武力で相見えるところだった。しかし、これらの争いが最終的に本当の対立に到らなかった原因の大きな部分はこれらの国家の自制にあった。

もう一つは健全な東アジア安全保障システムを建設することである。地域の長期の平和のためには、一定の安全システムによって保障とすべきである。この面ではヨーロッパの20世紀後半以来の実践が良い手本を提供してくれる。東アジアにおいても、東南アジア国家がASEANを設立した後は、相互に交渉によって問題を解決することが習慣となっている。未来には東北アジアと東南アジアを包括した東アジア世界において、現在のASEANの協力システムを土台として、その組織上の健全と機能上の発展を進め、これにより、共同の東アジア安全のためにシステムの保障ができるようにする。同時に朝鮮核問題をめぐって2002年に開始された6カ国協議システムも東北アジア国家により、共同でこれを常設機構とし、東北アジア世界の安全の確立に適合した土台とするべきである。

*エントリのタイトルと一部内容を変更しました。

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2006年4月17日 (月)

6カ国協議のゆくえ

中国の隣国・日本で先日、学術会議「北東アジア協力対話」が開催されました。これを機に、朝鮮半島の非核化をめぐる6カ国協議の代表らが東京に集結しました。この会議の開催には日本の元外交官・田中均氏の尽力があったとされています(参照)。

しかし、これと時を同じくして、北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさんの夫が、韓国人拉致被害者の金英南氏であるというDNA検査結果が発表されました。これを受け、日本の佐々江賢一郎アジア大洋州局長が拉致問題の解決を朝鮮代表の金桂冠次官に強く迫る場面もあったと報道されています。また、拉致問題が日朝両国の間だけの問題ではなく、国際問題化する形勢を見せています。

朝鮮代表団はこれに態度を硬化させたようです。4月13日には東京都内のホテルで「(6カ国協議再開の)遅延は悪いことではない。この間により多くの抑止力をつくることができる」という相当な強硬発言も飛び出しました(参照)。6カ国協議再開の糸口になるかと思われた「北東アジア協力対話」ですが、むしろ状況は悪化したように見えます。

DNA検査の結果発表は日本の安倍晋三官房長官が主導したとの推測が流れています。安倍氏は以前から「朝鮮半島の非核化」という地域安全保障よりも、拉致問題という二国間問題に利益/関心を有していた人物です。今回の発表により、拉致問題を国際社会にアピールすることはある程度できたと言えますが、6カ国協議再開を最大の目標としている中国や韓国からは戸惑いの声も上がっているようです(参照)。日朝国交正常化を実現させたい田中均氏=小泉純一郎首相と、拉致問題解決を優先させたい安倍官房長官との路線の違いにより、「北東アジア協力対話」という数少ないチャンスを十分生かすことができなかったと言えそうです。

そうは言いつつも、全て日本のせいというわけではないでしょう。金桂冠氏は来日当初、アメリカ代表のヒル国務次官補との会談実現について、非常に積極的な姿勢を見せていましたが、これは実現することなく終わりました。ヒル氏が北朝鮮に対し譲歩する姿勢を見せなかったことが大きな原因でしょう。前回の6カ国協議再開のきっかけが北京での米朝直接対話だったことと考え合わせると、アメリカの態度の硬化が目立ちます。北朝鮮の積極姿勢を前にしても、無条件での6カ国協議復帰を表明しないかぎり、二国間会談を開く権限を与えられてなかったのかも知れません。このところ、チェイニー副大統領など、対北朝鮮強硬派が台頭してきていると伝えられています。

6カ国協議のゆくえはどうなるでしょうか。

先に引いた13日の金桂冠氏の発言はブラフのように聞こえます。その心は“核開発を止めてほしければ、早急に金融制裁を和らげて6カ国協議を再開せよ”というところでしょう。中国の立場は平和的手段による朝鮮半島の非核化で一貫しています(中国の国益から言って、中国周辺国で紛争が起きて欲しくはないはず)。また、中国の改革開放をモデルにした北朝鮮の経済改革を支持する姿勢を見せています。つまり、「改革はするが体制は変更しない(させない)」という立場です。金正日総書記の極秘(?)訪中が大きなニュースになったのはそれを示すシグナルではないでしょうか。

政権内部の権力闘争によって一貫した政策を打ち出せない日米両国の動きを目にして、議長国である中国はイライラさせられることになるかもしれませんね。ただ、中国も最終的には北朝鮮に譲歩を求めることになるでしょう。

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2006年3月27日 (月)

スティグリッツ、中国経済を語る その2

前回のエントリの反響が大きいようなので、今回もスティグリッツの講演を報じた記事をご紹介します。『新京報』「ノベール賞受賞者が“十一五”を語る 中国の過剰な貯蓄はすぐになくなる」です。ちなみに前回は清華大学での講演で、今回は北京大学での講演のようです。

中央銀行は先日、住民の貯蓄願望が強まっていると発表したが、スティグリッツは「中国の過剰な貯蓄はすぐになくなるだろう。中国はその時のために調整政策を準備しておくべきだ」と述べた。

スティグリッツは「今日、進めている政策は幅広い柔軟性があるべきだ。それによって経済の需要の変化に合わせて相応の調整を行うのである」と述べた。スティグリッツの言う政策はすなわち内需を指向する政策である。「中国は将来、輸出によって経済成長を維持するのではなく、さらに多くを内需の拡大に頼ることになるだろう」。

スティグリッツは「ただ、資金は国内の消費を抑制する要素のうちの一つであるに過ぎない。中国は現在、市場経済に転換する過程にあり、社会保障システムが弱化している。時にはこの弱化が市場保障システムの樹立の速度よりもよほど速い」と分析する。しかし、彼は矛先を変えて、「明らかに我々はバランスを把握しなければならない。西側では、ある人は過剰に強大で設計の不合理な公共保障システムが貯蓄の減少とインセンティブの減退を招くことを心配している」と述べた。

スティグリッツは国家の“創新”システムは幾つかの方面を包括していると見なす。つまり、完全な教育システム。研究型大学や独立研究機構から基礎研究に対する有力な支持が行われていること。企業部門の知識の発展と転移を促進する政策、プロジェクト、制度があること。バランスのとれた知的財産権の制度があること。資金の来源があること。創新のリスクと失敗のデメリットを減少させる政策があること。

スティグリッツはバランスのとれた知的財産権制度の問題について特に重視して論じた。彼はTRIPSとWTOに加盟したことは多くのメリットがあったとしながらも、知識のギャップを縮小することはさらに困難になったと考えている。なぜなら、TRIPSの知的財産権システムはバランスのとれたものではないからだ。知財権は巨大な社会コストとなり、独占や価格の上昇、市場の歪曲を生み出している。これらがすでにある独占権の上に立てられたり、鍵となる領域にタッチする時、社会のコストは十分巨大になる。二つの状況下での先進国(とWTO)のスタンダードなやり方は知財権を迂回することである。つまり、強制許可証を使用し、不当な市場行為を禁止するのである。この手の不当行為は発展途上国(中国のような)では特に重大である。

「知財権のもたらす創新のメリットが十分に大きいときのみ、知財権の巨大なコストは受け入れることができるのである」。スティグリッツは中国はTRIPSとWTOの枠組のもとで、できる限り知財権制度のバランスを保護するべきで、強制許可証発行等の問題での柔軟性を含め、TRIPSを充分に利用すべきであると考えている。

スティグリッツは講演中、反独占の問題について述べ、「市場経済は十分な競争があって初めてメリットが生まれる。しかし、利益をあげる最も簡単な方法は独占である。参入障壁を通じて競争を弱めるのだ。だから、積極的にして用心深い反独占機構があることが重要である」と述べた。

「多くの競争を抑制するやり方はみな現地で発生している」。そのため、スティグリッツは全国的な反独占機構だけではなく、地方に反独占機構を設けることを建議した。

その他、スティグリッツは中国が市場経済に向かう過程で、利益集団の作用を防ぐ必要があると述べた。「ある人はエネルギーが低価格に抑えられていることがすでに利益集団の影響を体現していると考えている。もし、中国の市場経済が利益集団の影響を最小限度にとどめるならば、中国はまさに中国の特色ある市場経済を作り上げることになるだろう」。

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2006年3月26日 (日)

スティグリッツ、中国経済を語る

先日、ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ氏が中国の大学などでいくつか講演を行ったようです。以下に『中国青年報』の記事「スティグリッツ:政府は小さくなりすぎることに注意せよ」の抄訳をお届けします。

中国は政府が過剰反応すること、つまり、政府の規制の強い状況から一気に規制の少ない状況になることに注意すべきだ。

“十一五”(第十一次五カ年計画)要綱は総合的戦略で未来の政府の役割の問題を解決し、政府がどの領域で作用を発揮するか明確化した。中国がどのような市場経済モデルを選ぶにせよ、いずれも政府の役割は発揮させなければならない。市場も変調を来たすことはある。普通市場も必ずしも効率の最大化をもたらすものではない。政府と市場はバランスを保たなければならない。

最も重要なのは自分に適した市場経済モデルを選ぶことである。異なる市場モデルには異なるデメリットがあり、また異なった評価の指標がある。中国はどのような指数、指標によって、中国市場経済体制建設の状況を評価するのか考えなければならない。

ひとつ、重要なのは中間層の収入状況である。アメリカの過去5年間のGDPは毎年3〜4%の速度で増加しているが、中間層の収入は下降している。統計によれば、アメリカの中間層の収入は5年前より平均1500ドル下がっている。つまり、アメリカは豊かになっているのだが、貧しい人はかえって増加している。

もう一つ、重要な指標は環境指標である。もし、環境を代価としてGDPを増加させても、最終的には貧困を激化させるだけだろう。よって、経済成長を計算する時には、環境の損耗も計算に入れなくてはならない。

中国政府は人間開発指数(HDI)を評価システムの中に入れるべきだ。この指数は健康や受けた教育の程度などを含む。中国は歴史上、最も成功した貧困救済国家だが、中国のジニ係数はアジアで最高である。

中国が自主的で創造的なシステムを作るなら、知的財産権の過剰な保護を避けるよう注意すべきだ。

知的財産権の過保護の結果は低効率と独占であり、時にはイノベーションを阻害し、市場経済の回転を損害する。たとえば、専売特許障害のことである。今日、ソフト方面では数十万の特許がすでにイノベーションを阻害している。これら特許はたとえ一度読むだけでも多くの時間を消耗してしまう。

中国が知的財産権システムを作るなら、できる限り、世界の知的財産権システムとバランスをとるべきだ。特に薬物の領域では知的財産権の役割を最小限にする。現在、アメリカの医薬基金のやり方がいい方法である。新薬が開発されると、政府により買われて、公共産品に変わり、病人は安い価格でこの薬品を使うことが出来る。

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2006年3月19日 (日)

八栄八恥

3月4日、共産党総書記・国家主席である胡錦濤をはじめとする、呉邦国、温家宝など党および議会・政府の要人が、協議機関である政治協商会議の各分科会に出席し、討論に参加しました。

中国民主同盟・中国民主促進会の連合会議に参加した胡錦濤主席は「広範な幹部・群集、特に青少年が社会主義栄辱観を樹立するように指導しなければならない」と発言しました。

この「社会主義栄辱観」を列挙しますと、「祖国を熱愛すること」が栄、「祖国に危害を加えること」が恥。「人民に服務すること」が栄、「人民に背くこと」が恥。「科学を崇敬すること」が栄、「無知蒙昧」が恥。「労働に勤しむこと」が栄、「怠けることを好み、労働を嫌うこと」が恥。「団結し助け合うこと」が栄、「人を傷つけ、利己的であること」が恥。「誠実で信を守ること」が栄、「利を見て義を忘れること」が恥。「法規を遵守すること」が栄、「法に背き、紀律を乱すこと」が恥。「刻苦奮闘すること」が栄、「贅沢・淫蕩」が恥、ということです。

この発言は「八栄八恥」と概括され、各方面で積極的な宣伝活動が行われています。『人民日報』評論員論文「社会主義栄辱観の樹立――重大かつ緊迫した戦略的任務」は、

…栄辱観は世界観・人生観・価値観の重要な内容である。正確な栄辱観を樹立することは社会の文明程度の指標となり、経済・社会の順調な発展に必然の要求である。我々は社会主義栄辱観を樹立することの必要性、重要性と緊迫性を深刻に認識しなければならない。

…事実が証明していることは、健康な社会の風紀がなく、良好な道徳基準がなければ、一国の経済も発展せず、総合国力も強大にならないし、世界の民族の林に屹立することもさらに難しいということである。

と、栄辱観の樹立の必要性と緊迫性が述べられています。また、周済教育部長は「社会主義栄辱観を教材に、教室に、学生の頭脳に引き入れなければならない」と述べており、北京の教育関係者たちが開催した座談会では「八栄八恥」を学生の新しい座右の銘にすべきこと、これを童謡にして宣伝することなどが提起された言います(『北京晨報』記事)。

一見したところ、「八栄八恥」は普遍的に通用する道徳を列挙したようなものですが、これが「社会主義栄辱観」とされているとおり、ここでいう「愛国」とは共産党が指導する中華人民共和国を愛することにほかなりません。「八栄」の第一が「愛国」であることや、先ほど引いた『人民日報』記事が国力の増大や「世界の民族の林に屹立」することを目標に掲げていることからもわかるとおり、「愛国心」が道徳の最上位に位置づけられています。

このような「心の問題」への介入は、胡錦濤政権が2004年秋以来、打ち出している「党の執政能力の向上」というテーマと関わっていると考えられます。これは腐敗や汚職、非効率を改め、より良いガバナンスを提供することを目標とするものです。思想統制もこの文脈で考えることができます。

しかし、腐敗や非効率をもたらす根本的な原因は、民主的な監督を受けない一党独裁体制にあると言えるでしょう。より良いガバナンスを行うためには執政能力の向上が必要なのに、党の独裁を強化することが腐敗や非効率をもたらすというジレンマがあります。

よって、「執政能力の向上」が思想統制をもたらした、というわけではないのかもしれません。反対に、「執政能力の向上」のための手段やリソースが限られており、実現もできていないので、結果として「心の問題」にしか手をつけられない、ということかもしれません。また、政策的な失敗を政治体制ではなく、個人のモラルの問題として処理するための布石であるようにも見えてしまいます。

ちなみに3月4日、経済界の分科会に出席した温家宝総理は「我々は引き続き民情を深く理解し、民意を十分反映し、民の智恵を広く集中する政策決定機制を完璧にし、それでもって科学的、民主的政策決定を制度化、規範化しなければならない」と述べているのですが、こちらはほとんど顧みられていないようです。

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2006年2月 4日 (土)

ネグロポンテの中国論(およびその周辺)

1月31日、ブッシュ大統領が一般教書演説において、中国(とインド)を「新しい競争相手」と初めて指摘しました。

これに次いで、アメリカ国家情報局のネグロポンテ長官が2月2日、上院特別情報委員会の公聴会に出席し、報告を行いました。この中で中国に触れた部分もあったようです。

日本『毎日新聞』によれば、ネグロポンテ長官は「中国にも言及し、『急速に国力を増しており、いずれ米国と同等の競争相手になりそうだ』と分析し」、「急速な経済成長で、国際的政治力が増し、軍の展開能力向上のための近代化推進が可能になったと指摘した」ということです。ここでは少しだけ中国脅威論的なニュアンスが窺えます。

ロイターの配信した記事は少しニュアンスが異なっているようです。

"China's rise may be hobbled by systemic problems and the Communist Party's resistance to the demand for political participation that economic growth generates," U.S. intelligence chief John Negroponte said.

"Beijing's determination to repress real or perceived challenges, from dispossessed peasants to religious organizations, could lead to serious instability at home and less effective policies abroad," he told a Senate committee looking into the range of threats to the United States.

共産党が人民の政治参加を拒んでいることが中国の台頭の足手まといになり、持たざる農民から宗教団体までのチャレンジを押さえ込もうとする政府の決断は深刻な不安定をもたらすかもしれない、と懸念を表明しています。

香港『明報』よれば、ネグロポンテ長官は以上の指摘のほか、「中国は現在、東南アジアや中央アジアで経済的、政治的影響力を増すために努力しており、それによって域内に反中国の国家が出現することを防いでいる」と述べたということです。ここには中国の覇権志向に対するアメリカの注意が見て取れます。しかし、「台湾に対する煽動的な言論が少なくなり、台湾の野党と接触、また経済的パワーで台湾人民の支持を勝ち取ろうとしている」と、両岸関係の緩和は評価しているようであります。

さて、一般教書演説、ネグロポンテ長官の証言に続き、3日には国防総省が「四年ごとの国防戦略見直し(QDR)」を発表しました。共同通信によれば、中国を「米国と軍事的に競い合える最も大きな潜在力を持つ国」と指摘してるそうです。

これに対して、韓国訪問中のアメリカのペース統合参謀本部議長が4日(アメリカ時間では3日)、「米中関係について楽観視している。共通利益は相違よりも更に大きい」、「経済的相互依存が深まれば、軍事衝突の可能性は小さくなる」などと述べています。さらに中国の軍事力拡大について一定の理解を示す発言もしているようです(AFP記事)。

中国を「競争相手」と位置付け、覇権拡大や潜在的脅威に注意しながらも、相互依存を深め、中国に「責任ある利害関係者」の役割を求め、さらには自由と民主の拡大を求めるアメリカの複雑な対応を見て取ることができます。

中国も冷静です。中国新聞網の記事は、ペース議長の発言をQDRとのバランスをとるものだと見ているようです。また、QDR中の「アジア太平洋地域において中国が建設的、平和的役割を果たすよう励ます」、「アメリカの目標は引き続き中国を経済的パートナーとし、世界にとって有利なパワーとすること」という部分も紹介しています。

台湾・陳水扁総統が最近行った大胆な発言に対し、アメリカが即座に批判的態度をとったこと(『毎日新聞』記事)に対し、当初、強い反発が予想された中国が沈黙を保っているという微妙な状況も、こうした米中両国の複雑な関係が反映しているのかもしれません。

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2006年1月21日 (土)

イラン核問題と中国

イランの核開発問題が緊迫の度を増しています。

従来のEU3(イギリス、フランス、ドイツ)主導の外交交渉が行き詰まりを見せ、国連安保理付託も選択肢として浮上するなかで、中国もロシア、アメリカとともに交渉の当事者として登場することになりました。1月16日、ロンドンで6カ国による協議が開催され、EU3と米国が安保理付託に消極的な中国、ロシアの説得に当たったとされています。しかし、現在のところ、アメリカが要求するような迅速な安保理付託には向かわないようです。

中国はいかなる決断を下すでしょうか。

『中国青年報』の記事「イラン核危機は中国外交の試練」は、中国は世界最大の発展途上国として第三世界と密接な関係を保持しており、イランとも伝統的友好関係を保持しているうえに石油や天然ガスに関わるプロジェクトに参加していることから、イランに対する制裁は中国の国益に合致しないと指摘します。さらに中国の多国間主義の堅持、内政不干渉と平和共存いう外交原則からも武力による解決を望まないとしています。結局のところ、IAEAの枠組のもとでのEU3とイランとの交渉を支持するということになります。これにはアメリカがイラク戦争の泥沼化により、容易に武力に訴えることができないだろうという見立ても働いているようです。

『国際先駆導報』の記事「六大国がイラン核問題を討論、会談は中国の役割を試す」は、イラン核問題は中国にとって外交的に得点を稼ぐことのできる問題と同時に、中国外交に対する挑戦でもあると述べ、イランが強硬姿勢を貫くならば中国も安保理に付託すべきか否か選択をしなければならないと指摘します。同紙は2月2日、3日にウィーンで開催されるIAEA緊急会議が今後のイラン情勢を占う鍵だとしています。

イラン核問題に対して、楽観的な見通しも存在しています。『新京報』の記事「強硬カード:ネジャドは一石二鳥を狙う」は、アフマディネジャド大統領が、国内経済の不振と国際圧力に対し、強硬姿勢を見せることで国内の不満をそらし、外交の主導権を握ろうとしたものだと分析しています。また、この強硬姿勢はイラク戦争で足をとられているアメリカがイランに対する武力制裁を発動できないを見越したもので、交渉における地位をあげ、イスラム世界や中東での地位をあげることもできる「一石二鳥」の方法であると指摘します。しかし、欧米に不信感を持つイランに対し、ロシア・中国が当事者として加わったことで、信頼を増すことができ、イランも国民生活の改善、経済発展という国益の観点から欧米との徹底的な対立は避けるだろうから、情勢は緩和に向かうだろうと予想しています。

ところで、中国では国連安保理常任理事国(核保有国)+ドイツを「六大国」と呼んでいるようです。1954年のジュネーブ会議以来、中国には「大国」としての役割を担ってきたこと、あるいは担おうとしてきたことを思い起こさせます。

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2006年1月11日 (水)

モラレス訪中

ボリビア大統領選に勝利したモラレス氏が1月8〜9日、訪中しました。これは中国にとって今年最初の海外要人の訪問となります。

中国新聞網「中国とラテンアメリカ、政治的信頼強化し、すべての関係が上昇」は香港『大公報』紙を引用し、中国共産党政治局の9人の常務委員のうち、7人が最近1年の間に中南米およびカリブ海諸国を訪問していることを紹介し、中国とラテンアメリカの関係強化が進んでいることを指摘しています。交流は政府のみに留まらず、議会、政党、民間でも進められています。中国全人代はラテンアメリカ議会の正式なオブザーバーなのだそうです。また投資や貿易での関係も拡大しているそうです。また、中南米及びカリブ海諸国には台湾(中華民国)と外交関係を保持している国もあることから、この地域で中国(中華人民共和国)が影響力を増すことは統一も促進するだろうと指摘されています。

1月9日、モラレス氏と会談した胡錦濤国家主席は(1)政府・議会・政党間交流の拡大、(2)経済貿易関係の拡大、(3)教育・文化・技術・医療など民間交流の推進、(4)多国間枠組での協力、という四点の提案しています。

ところで、中南米はアメリカ合衆国の「裏庭」と称されることもありますが、キューバのカストロ議長、ベネズエラのチャベス大統領など反米的なスタンスをとる指導者もいます。モラレス氏も自らを「米国の悪夢」と称しています。彼の当選が示しているように、この地域では最近、左傾化の政治潮流が見られます。こうした国々ではアメリカの影響力から脱することを目標としているわけですが、同時に貧富の格差の解消など、差し迫った国内経済問題を解決する必要があります。モラレス氏が選んだ手段の一つは中国からの投資を呼び込むことでした。

『東方早報』「ボリビア大統領の訪中、米国の注目を引く」はモラレス氏が天然ガス資源を武器に中国を抱き込み、ラテンアメリカにおける米国の影響力を削ぐことを目指しているのではないか、との米国内の疑念を紹介しています。今のところ、中国が米国のラテンアメリカでの影響力を脅かすことはないとしながらも、今後の中国の国際的影響力の上昇にともなって、ラテンアメリカ諸国はますます中国の経済的、政治的作用を重視するだろう、とアナリストは見ています。

今のところ、中国とラテンアメリカの利益は相補的なもののようです。中国もエネルギー需要が高まっていますし、安全保障の観点から輸入国の多元化が必要です。また、国際政治の角度からも世界の多極化も進めたいと考えています。しかし、ラテンアメリカ諸国の間で影響力を高めることは「中国脅威論」を呼び起こしかねません。また、アメリカとの良好な関係を損なうことも避けたいでしょう。

2006年の中国外交は「平和的台頭」を目指す国益優先のアプローチと中国脅威論の除去を目指す慎重なアプローチ、また「責任ある大国」として国際問題に関わっていく積極的なアプローチの間で、難しい舵取りを迫られるものになるでしょう。

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2005年12月24日 (土)

温家宝演説を読む

今月中旬、ASEAN+3首脳会議、そして、史上初めての東アジア首脳会議がマレーシアの首都クアラルンプールで開催されました。中国からは温家宝国務院総理が出席しました。

彼がそれぞれの首脳会議で発表した演説の全文が外交部ホームページで公開されています。12日のASEAN+3首脳会議で発表された「協力を強固にし深化させ、共に美しい未来を創ろう」(以下、10+3演説と呼ぶ)、14日の東アジア首脳会議で発表された「開放と寛容を堅持し、Win-Winを実現しよう」(以下、EAS演説と呼ぶ)という二つの演説では、ともに東アジア協力におけるASEANの主導権を認めています。

10+3演説では次のように述べられています。

中国は東アジア地域の一員であり、中国の発展は東アジア各国の支持と幇助とは切っても切れない。東アジアの繁栄と振興も中国の発展からは離れることができない。堅忍不抜に地域協力を進めていくことは中国の外交政策の重要な構成部分となっている。中国は地域協力の主導権を求めるつもりは全く無い。中国は各国の共同利益に符合し、東アジア協力の発展に有利となるイニシアティブの一切を支持する。ASEANは10+3協力の組織者であり、主要な推進力である。これは各国の現実的かつ賢明な選択である。中国はASEANが主導的役割を担うことを引き続き支持し、また、日中韓が協調を強化し、十分にそれぞれの優勢と作用を発揮するように主張する。中国は本地域を閉鎖的、あるいは排他的集団にすることに反対し、10+3とアメリカ、EUおよびその他域外国家と組織とのコミュニケーションを強化し、不断に共同利益を拡大し、共同発展を図ることを支持する。

EAS演説では次のように述べます。

事実はすでに中国が責任感ある国家であることを証明している。中国は世界平和の擁護と共同発展を促進する堅実なパワーである。国際情勢がいかに変幻しても中国は本地域の人民にとって信頼のおける、頼れるパートナーである。中国は絶対に本地域で支配的な地位を求めることはない。中国の発展はいかなる人にとっても障害ではなく、いかなる国にとっても脅威を構成しない。安定し、開放的で、繁栄した中国はきっと地域と世界の平和の擁護、人類の共同発展のためにさらに大きな貢献をするだろう。

こうした発言は参加各国の間にも存在する中国脅威論を払拭する意味があるでしょう。同時に、首脳会議には参加していないものの、中国が東アジア秩序の形成でリーダーシップを握ることを警戒している米国の疑念を和らげる意図があるものと思われます。10+3演説には引用したように、これを閉鎖的、排他的組織にすることに反対し、「アメリカ、EUおよびその他域外国家と組織とのコミュニケーションを強化」を打ち出しており、EAS演説にも「中国は閉鎖的、排他的あるいは、特定国を目標とした東アジア協力には反対する」と述べる箇所が出てきます。

他方、二つの演説で差が出た部分があります。EAS演説では、(1)発展を中心として、共同繁栄を促進、(2)和睦関係をつくり、平和的安定を擁護、(3)協力を道筋として、Win-Winを実現する…と、大まかに議題を提起しただけなのに対し、10+3演説では、(1)長期的な発展に着目し、協力の推進を着実にする、(2)柔軟な方式を採用し、開放的プロセスを保持する、(3)相互の信任を強め、大同を求め小異を残す、(4)各国に配慮し、Win-Winの成果を求める…という、課題が提出された後、(1)ASEAN+3の10周年に合わせ、2007年に共同宣言を発表する、(2)FTAの研究、チェンマイ・イニシアティブの加速化など経済貿易方面の協力を進める、(3)鳥インフルエンザなど疫病や自然災害対策などの情報交換と技術協力を進める(中国はアジア地域災害研究センターを建設する)、(4)発展の差を縮小。国連開発計画が中国に設置した貧困扶助センターにて、来年、第二回貧困扶助ハイレベル検討会を開催する。農業技術協力も行う、(5)テロ、腐敗、麻薬販売、海上防衛など非伝統的安全領域での協力。また中国は10+3の軍事体育交流を発案する、(6)文化、教育、青年の交流を進める。中国は来年、アジア芸術祭を開催するがそのなかでASEAN文化週も開催する。また、学歴・学位の相互認定を進める…などという具体的な発案をしています。

ここには東アジア首脳会議が初開催のため、その具体的な方向性がいまだ固まっていないこと、中国自身がASEAN+3を東アジア共同体の母体と位置づけようとしていること(ちなみにEAS演説には「共同体」の文字がありません)などが影響していると考えられます。

他方、EAS演説には「科学的発展観」、「和諧社会」、「睦隣、安隣、富隣」、「平和五原則」、「新安全観」など中国の内政・外交・安保政策を表すキーワードが一挙に登場しており、より中国脅威論の払拭に努めた感があります。インドやオーストラリアが参加したこともその原因かもしれません。また東アジア首脳会議の方が国際的な注目度が高かったこともあるでしょう。

さて、温家宝総理は中国は支配的地位を求めないと言いましたが、中国の隣国・日本のメディアでは今次の東アジア首脳会議は日中両国の主導権争いとイメージされてきました。これは中国と日本、どちらが優勢と見るかという立場を問わず、です。一方、中国メディアの一部は「主導権争い」というイメージが東アジア協力を阻害する要因となることに懸念を持っているように思われます(例えば『環球時報』に掲載された鼎談)。

とはいえ、中国メディアにも中国の影響力増大と日本の相対的な地位低下を並べて論じているものも沢山あります。どうも、東アジア一体化を阻害するような日中関係の悪循環が続きそうな気がします。

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2005年12月17日 (土)

マレーシアにおける中国観の一端

日本の最大野党・民主党党首の前原誠司氏が中国に訪問する以前にアメリカで演説し、中国の軍拡は「現実の脅威」であると指摘したことが、中国の反発を呼んでいます。

12月14日の外交部定例記者会見において、秦剛発言人(報道官)は次のように述べています。

中国人民は古より平和を愛好しており、我々は「和を貴しと為す」を主張している。わが国はいまだかつて他国を侵略したことはなく、他国の領土で殺人・放火を行ったことはない。

この発言は日本『産経新聞』でも報道されています(共同通信社の配信記事)。記事中の「中国は1949年の共産党政権誕生以来、50年の朝鮮戦争、62年の中印国境紛争、69年の中ソ国境紛争、79年の中越紛争など数多くの軍事紛争を経験している」という文章が暗示するように、秦剛氏の発言は日本で違和感を持たれるものではないでしょうか。

ところで、日本のテレビ局TBSのニュース番組「ニュース23」では12月12~14日まで特集「奔流アジア」が放送されました。第2回目の13日は東南アジア諸国における中国の存在感の高まりに焦点を当てたものになっていましたが、そのなかで、「日本は侵略のイメージを拭えないが、中国は他国を侵略したことはない」というマレーシアのジャーナリストの発言が印象深かったです。

もちろん、このジャーナリスト氏のごく個人的な考え方かも知れませんし、日本のテレビ局が意図的な取り上げ方をしたのかも知れません。

しかし、最近の報じられた日本『毎日新聞』によるマハティール氏のインタビューは図らずも、このジャーナリスト氏の意見が決して孤立したものではないということを裏付けているように思われます。

--憲法改正問題、とりわけ憲法9条の改正案をどう見ますか。

マ氏 隣国に脅威を与えることになる。日本はアジア諸国の中で唯一他のアジア諸国を征服しようとして植民地化した。だからいまだに脅威に思っている隣国がある。中国は4000年もの間、大国だが、中国の一部とされる国以外を征服したりはしなかった。ベトナム国境で紛争があったが、ベトナムが勝利を治めた。

マレーシアは中国と1000年以上も貿易関係にあるが、一度も中国に侵略されたことはない。ところが、欧州は、開国してわずか2年でマラッカを侵略した。そして、どんどん植民地化した。明治維新後、日本は欧州のやり方をまねしてしまった。

マハティール氏の発言にも微妙な部分が見受けられますが、日本の中国観とは随分異なっていて、なかなか興味深いものがあります。東南アジア諸国も一枚岩というわけではないし、各国の内部でも中国観は多元化しているものと思われますが、だからこそ、このような見方もあるのだということを知っておいて損は無いと思います。

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2005年12月16日 (金)

王畿と諸侯

すでに中国の隣国・日本でも報道されていますが、広東省汕尾市東洲村において風力発電所をめぐる土地収用に抗議する住民と武装警察が衝突、住民側に死者が出るという事件が発生しています(なお、地方当局はこれを「誤射」と説明しています)。また、石炭需要が高まる冬に入ってから多数の死傷者を出す炭鉱事故が頻発しています。これら、事故が発生した炭鉱の多くには地方における官と経営者の癒着があると言います。

このような土地収用にまつわる問題や官民癒着事件などの発生の原因の一つとして、中央政府の決定に地方政府が従わないということが挙げられます。『瞭望』の記事「中央政令の統一を擁護し、中央と地方の職権を規範化せよ」によれば、地方政府が保護主義的手法によって全国的な統一市場を形成することを妨げているだけなく、地方の経済自主権の拡大や財政・税務改革という背景のもとで強力に財源拡大を目指すようになっており、そのなかで政府の権威を傷つける挙動も現れていると指摘します。

たとえば、土地収用や住民移転の過程で民衆の利益に対する関心が足りないことが、党と中央政府の全体のイメージを損なっており、また、中央のマクロコントロールに先んじてひそかに対策を練ったり、酷いものになれば中央の政策に対し(卓球で言う)エッジボールを返せば、利益を得られると誤読している地方もあるとのことです。さらに、中央の権威を貶めるのは地方政府と経済界の癒着であり、これにより中央からの政策が骨抜きにされているといいます。

12月13日付けシンガポール『聯合早報』は、中央と地方との関係についての特集記事を掲載しています。北京の于沢遠氏は「中央と地方との関係は法制化を要す」という記事のなかで、毛沢東や鄧小平時代のように指導者のカリスマ性に頼って地方に言うことを聞かせることは難しくなったと指摘。現在のような指導者を核心とした中央の権威を徐々に憲法や法律によって保障される中央権力へと変えていき、最終的には人治ではなく法治によって中央と地方の関係を協調するように提言します。これにはもちろん中国の政治体制改革が必要だと主張します。

また、張従興氏「鍵は執政の合法性にあり」も東洲村の事件から語り始め、現在の中国大都市の発展は小都市を犠牲にしたものだと言います。胡温(胡錦濤・温家宝)体制になって以来、「三農問題」(農民・農村・農業問題)を重視し、中央政府が農業税の取り消しを宣言するなど「徳政」を行っているのはその厳重性を表しているとします。しかし、張氏はこのような「徳政」を実行するには地方の協力が必要だと言います。さもなければ、「王畿」の「徳政」が、「諸侯国」では「庸政」、「劣政」、最後には「暴政」になってしまうとします。張氏もかつてのカリスマによる指導や財政的に地方を拘束する手段は使えなくなってきていると言い、中央政府は公認された執政の合法性を取得しなければならないと指摘します。そのための最も直接的な方法は全民選挙だが、中国政治の現実からいえば不可能。しかし全人代制度の改善や党員による党指導者の直接選挙は可能であるし、そうすべきだというのが張氏の主張です。

ところで、『フォーリン・アフェアーズ』(日本では『論座』2006年1月号掲載)にアメリカのアジア専門家エリザベス・エコノミー氏のインタビューが掲載されているのですが、偶然にも、ここでも中央と地方の関係が取り上げられています。彼女は鳥インフルエンザの情報にしろ、知的所有権の保護にしろ、中国が国際社会に責任を果たすためには地方政府の抜本的な制度改革や捜査当局への資本投入の増加によって、すぐれた地方統治システムを作り上げることが不可欠だとコメントしています。

しかし、エコノミー氏が言うように「政治的にも経済的にもそのプロセスは困難であり、長い時間を必要とする」でしょう。短期的には、中国にとっても国際社会にとっても厳しい時間が続きそうです。

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2005年11月30日 (水)

そして、ハートランドへ(ブッシュのアジア歴訪 Ⅲ)

前回見たように、ゼーリック国務省副長官は、中国が「responsible stakeholder」として国際秩序の維持のために積極的役割を担うことを期待しています。一方、鄭必堅・中国改革フォーラム理事は「中国は既存の国際秩序に挑戦することはない」と述べています。

中国の国際社会での責任ある役割といえば、まずは6カ国協議での議長国としての働きが思い浮かぶでしょう。今年9月には共同声明を採択し、平和的手段による朝鮮半島の非核化を実現と、停戦協定に替わる平和体制の構築が謳われました。文字通り、画期的と言ってもいいでしょう。

アメリカと北朝鮮の間には今でも埋めがたい意見の相違がありますが、アメリカの態度は以前に比べ、ずいぶん軟化したように思われます。今年6月に行われた米韓首脳会談ではブッシュ大統領が「ミスター金正日」と敬称をつけて呼びました。さらに北朝鮮がアメリカによる「圧制の拠点」呼称の撤回を求めて以降、ライス国務長官はインタビューに答えて「北朝鮮の体制は“見ればわかる”」というふうに、直言するのを控えるようになりました。こうして平和的手段による朝鮮半島の非核化を交渉するための素地が生まれたのですが、ここでは地域の安定に責任を持つ国家としての中国の仲介も大きな役割を果たしたと思われます。

一方、鄭必堅氏の言う「既存の国際秩序」とはどのようなものでしょうか。このヒントになるのが、今年7月初めにモスクワで発表された「21世紀国際秩序に関する中露共同声明」でしょう。ここでは「世界の多極化と経済のグローバル化は現在の人類発展段階の重要な趨勢となっている」と示されています。鄭氏は「多極化」という言葉を直接には使っていませんが、「既存の国際秩序」という言葉のなかに、それが多極化へと向かっているという認識が含まれているのかもしれません。だとすれば、当然のことながら、中国が多極のなかの一極となることを目指しているのでしょう。

さて、前述したように、朝鮮半島の非核化をめぐってはアメリカが態度をかなり軟化させました。しかし、最近、アメリカ政府から強硬な発言が相次いでいます。まずは11月6日、訪問先のブラジルでブッシュ大統領が“ミスター金正日”を再び「暴君」と呼びました。さらにAPEC期間中、6カ国協議主席代表のクリストファー・ヒル国務次官補が北朝鮮の存在目的に疑問を発したと伝えられています(ネット上で記事は見つかりませんでした。密かに撤回されたのかも知れません)。こうした発言は短期的には北朝鮮に譲歩しすぎだ、という議会からの批判をかわすためのものと見ることもできるかも知れません。しかし、長期的な原因も存在していると考えられます。民主主義という価値観を持ち合わせていない国家の体制を維持したまま、東北アジアの平和体制を構築することが果たしてできるのか、そして、可能だとしても、そのようにして形成された地域秩序がアメリカの国益に適うのか、そこでアメリカの影響力が維持できるのか、という疑問があるのではないでしょうか。

今回のブッシュ大統領のアジア歴訪の最終地はモンゴルとなりました。ここでもブッシュ大統領がイラク戦争への協力とともにモンゴルの民主主義の発展を大いに賞賛しました。モンゴルには先月、ラムズフェルド国防長官も訪問しています。人口300万の小国にアメリカ要人が相次いで訪問するというのも珍しいことではないでしょうか。

実は、ブッシュ大統領がウランバートルの地を踏んだ11月21日、ウズベキスタンでは駐留アメリカ軍の撤退が完了しています。これに先立つ今年7月、中露両国と中央アジア諸国からなる上海協力機構(SCO)が中央アジアにおける米軍駐留に期限を求める声明を発表しています。先月訪中したラムズフェルド氏もSCOの意図について質問したと外電は報じていますが、これは中国や日本のメディアではまったく報じられていない点です(もっとも中国では海外要人との会談では常にポジティブな面しか報じられないのですが)。

こうした事実を踏まえると、アメリカのモンゴル重視の意味がよく見えてきます。『新京報』『環球時報』、シンガポール『聯合早報』などがアメリカにとってモンゴルの地政学的重要性が上昇しつつあることを論じています。しかし、これは裏を返せば内陸アジア全体におけるアメリカのプレゼンスが減退しつつあることを示しているのかもしれません。

さらに、モンゴルも中露両国との経済の結びつきや安全保障上の理由から、アメリカ一辺倒政策を採ることはできません。現在、モンゴルのエンフバヤル大統領が27日から来月3日という長期にわたって中国を訪問しています。29日に「中蒙共同声明」が発表されました。ここでは、中蒙二カ国および中露蒙三カ国の協力の深化と、東アジア地域の一体化への参与が謳われています。

ゼーリック氏はARF(ASEAN地域フォーラム)やAPECなどアメリカが参加する枠組において中国との協力関係を訴えたのに対し、鄭氏は『フォーリン・アフェアーズ』で発表した論文で東アジア共同体形成プロセスからアメリカを排除するものではない、と述べています。いずれにしろ、この地域で中国と米国が上手く協調できるか否かが地域の安定と民主化の鍵となりそうです。

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2005年11月27日 (日)

アメリカの対中政策をめぐって(ブッシュのアジア歴訪 Ⅱ)

今回は、中国がアメリカの対中政策をどのように考えているのかということを考えてみたいと思います。

ブッシュ訪中を前に新華社が対中政策について長い分析記事を書いています。訪中後も『中国新聞週刊』誌が特集を組んでいます。ともに最近のアメリカの対中政策のキーワードとして、9月21日にゼーリック国務省副長官が行った講演のなかの「責任を負う利害関係者(responsible stakeholder)」という言葉を挙げています。ちなみにゼーリック氏の講演の全文はこちらです。

この講演は、中国改革フォーラム理事・鄭必堅氏の提起した「和平的台頭(和平崛起)」論に対する一つの反応であると見なされています。鄭氏は2004年4月、海南島ボアオで開催されたボアオ・フォーラムで正式に「平和的台頭」という概念を提起し、諸外国に広がる「中国脅威論」を打ち消す役割を担っています。アメリカ『フォーリン・アフェアーズ』誌にも今秋、鄭氏の論文が掲載されました(日本でも『論座』10月号にて翻訳されたものが読めます)。

ゼーリック氏は講演において、過去30年のアメリカの対中政策は中国を国際秩序に取り込むものであったと概括したうえで、今後は中国に、責任ある大国として国際秩序を維持するために、アメリカと協力しながら働くことを求めています。中国の多くのメディアはこうしたアメリカの対中政策の変化を「中米関係はよりプラクティカルなものになりつつある」と評し、好意的にとらえているようです。

ブッシュ大統領の中国訪問中、『ニューヨーク・タイムズ』紙が社説で、中国に対して「新・封じ込め政策」をとっているとして、アメリカ政府を批判しましたが、国務省のエレリ報道官はプレス・ブリーフィングで新華社記者の質問に対し、「アメリカは中国が台頭する大国だと認めている。中国はアメリカにとってライバルというより、パートナーと言った方がよい。アメリカは中国が世界の平和と繁栄に対し、建設的な役割を演じるように求める」と答えています

さて、ブッシュ訪中後、今度はゼーリック氏の演説に反応し、鄭必堅氏が『人民日報』に論説を発表しています。

これは主にソビエト共産党と中国共産党との違いを論じたものになっています。1979年にソ連がアフガン侵攻を始め、“世界革命”の名の下に軍事的覇権を確立しようとしたのに対し、中国共産党はグローバリゼーションと連携して中国の特色ある社会主義を建設する道を選んだとし、中国は既存の国際秩序に挑戦するつもりはなく、社会主義市場経済と社会主義民主政治を発展させていくと主張しています。

ゼーリック氏の講演が、アメリカの関与によって中国が国際秩序に取り込まれ、それが今日の中国をかつてのソ連と違うものにしたと主張しているのに対し、鄭氏が中国共産党とソビエト共産党が違う道をたどることになった原因は社会主義に対する理解、および歴史文化の伝統の違いによると、その自主性を強調している点は興味深いことです。また、「中国共産党が力を持っているのは、(領土主権の完全と近代化という)中華民族の二大歴史的追及を最も忠実に代表しているからだ」とも言います。ともかく、「和を以って貴しと為す」中国はソ連と違って、対内的に専制を行ったり、対外的に拡張したりはしないという主張です。

しかし、鄭氏は「当然、現在の国際秩序にも不合理な部分は多々ある。しかし、我々は何か他の方法によってではなく、改革という方法によって、国際政治経済新秩序を建設していくことを主張する」とも述べています。こうした主張の背景にあるものは何でしょうか。また、アメリカはこの主張をどのように受け止めるのでしょうか。

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2005年11月25日 (金)

ブッシュのアジア歴訪 Ⅰ

胡錦濤主席の訪朝から、秋の活発な外交活動が始まりました。北朝鮮から帰国してすぐに訪越し、さらに欧州三カ国(英・独・スペイン)訪問、そこから韓国に向かい、釜山APECに出席した後に帰国、今度はホストとしてアメリカのブッシュ大統領の訪問を迎えました。

ブッシュ大統領もこの時期、活発なアジア外交を展開しており、日本・韓国を訪問、APEC出席後に訪中し、その後、モンゴルへと向かっています。

実は、ブッシュ大統領はアジア歴訪前に関係国メディアのインタビューを受けています。そこでは悪化した日中・日韓関係について次のように述べています。

No question that there's tension. On the other hand, if you look at capital flows between Japan and China, there is a significant amount of investment taking place, which indicates to me that there is a possibility for the relations to improve over time. In other words, not all aspects of the relationship is negative.

「緊張があることは疑いないが、日中間で莫大な投資が行われていることなどを見れば、全ての側面が悪化しているとは言えない」という立場です。これは日本の小泉首相の言うことと似ている部分もあります。しかし、韓国KBSや日本NHKとのインタビューでは次のようにも言っています。

I am aware of the friction caused by the Prime Minister of Japan's decision.[...]And I understand the sentiments of the South Korean people; they're still angry about the past. And so there's a natural reaction, when they view a decision made by the Prime Minister. (日本の首相の決断により引き起こされた摩擦に注意している。いまだ過去に怒りを感じている韓国の人々の心情は理解している。日本の首相の決断を目にした彼らの反応は自然なものだ)

But the Prime Minister is a savvy man, and he is a smart man. And he knows very well that it requires work to get past old grievances.(賢明な小泉首相は古いわだかまりを過去のものとするための努力が必要なことを知っているだろう)

またブッシュ大統領は「自分にできる役割がある」としきりに主張しており、こうした発言が訪日にどのような影響を与えるのかと憶測を呼びましたが、日米首脳会談後の記者会見では「強固な日米同盟が地域の安定の柱」と言い、京都での講演では日本と韓国、そして台湾の名を挙げてアジアにおける自由と民主主義の発展を賞賛しました。こうした発言は中国政府の神経を逆撫でするものだったのではないでしょうか。

さて、中米首脳会談では、人民元改革や貿易摩擦、知財権保護、鳥インフルエンザの拡散防止のための協力、朝鮮半島の非核化に向けた6カ国協議での協力など実務的な話し合いのほか、やはりブッシュ大統領が宗教の自由や政治活動の自由の拡大を要求する場面もあったそうです。ここではブッシュ大統領がチベット亡命政府のダライ・ラマを北京に招くように提案したとも言われています。さらに、ブッシュ大統領が中国と日本が“未来志向”の関係を持つよう、胡錦濤主席に態度の軟化を求めたとも伝えられています。

アメリカの一連の動きは中国に対する牽制とも感じられますし、日中関係の悪化を食い止めるにしても中国側の態度の変化を求めているようにも見えます。

ところが、ロイターによるとAPEC期間中、クリストファー・ヒル国務次官補は次のように発言したといいます。

"We want Japan to have a good relationship with China," he said. "And it's a little frustrating to us, to the U.S., how bad the relationship has become between Japan and China over these historical issues."

"It doesn't help us that when we have relations with Japan, people think, 'aha, that's an anti-Chinese move'," he added. "That's not in our interest."

ここでは日中関係の悪化の原因を歴史問題としたうえで、日本に関係を改善することを求めています。さらに関係の悪化が続くことは「いらだたしい」、アメリカと日本が関係を持つことによって反中国の動きだと思われることは「アメリカの国益ではない」と述べられています。

これはブッシュ大統領とヒル次官補の個性の差(ちなみにヒル次官補は駐ポーランド大使の経験があります)から、ホワイトハウスと国務省の役割分担(あるいは意見対立?)まで、色々な見方ができそうな発言です。何はともあれ、アメリカ高官が日中関係の悪化を、自国の利害と絡めて公の場で発言したことの意味は重いのではないでしょうか。

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2005年11月 6日 (日)

中露の蜜月

11月4日、中露総理第十次定期会合の共同コミュニケが発表されました。全文はこちらです。

『河南日報』が要点を押さえた記事を出しています。それによれば、●中国石油天然ガス集団公司とロシア・パイプライン運輸会社がロシアから中国への原油パイプラインの設計・建設の問題を研究することを支持する。双方は、ロシアから中国鉄道への原油供給の安定性を保障するように努力し、原油供給量が2006年から毎年1500万トンを下回らないようにする。●積極的に両国の天然ガス領域での協力を進め、ロシアの西シベリア及び極東から中国へのガス供給プロジェクトの研究・実施を早めることを支持する。

●中国とロシアの宇宙領域の協力関係を深化させる。宇宙協力分委会が責任を持って、中露宇宙領域2007年及び今後数年間の協力要綱を起草し、第七次例会で通過させる。宇宙領域の共同大型プロジェクト協力に重点的な関心を払う。月および深宇宙領域での双方の協力の可能性を探求する。双方の専門家が責任を持ってできるだけ早く共同開発と大プロジェクトの実行の可能性の研究する――が主な内容だということです。

最近、中露両国は政治・経済および安全保障の分野で非常に関係が深まっていますが、共同での月探査まで議題にのぼるまでになったようです。来年2006年は中国におけるロシア年、ロシアにおける中国年で民間交流も活発になりそうです。

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2005年11月 1日 (火)

第三次小泉内閣

中国の隣国、日本で内閣改造が行われました。

中国ではやはり、官房長官に安倍晋三、外務大臣に麻生太郎とタカ派政治家が主要なポストに着任したことが注目されているようです。実は、中国が特に反対しているのが首相、官房長官、外相の靖国参拝なのですが、今回の人事は中国の反発に正面から牽制を加えるものと受けとめられるのではないでしょうか。

『東方早報』の記事では、麻生外相が小泉首相から渡された紙に書いてあった6項目の任務のうち、日中関係が最後に置かれていたことに注目しているようです。さらに麻生外相が日中・日韓関係は同じような問題に直面しているが、日韓間では(民主主義や自由経済などの)価値観は接近しているので、問題を解決するには日韓・日中は区別して対応しなければならないと「放言」したと報じています(外務省HPに就任記者会見の原文があります)。

日中と日韓を区別するというのは、中国にとって苦い思い出を思い出させるものかもしれません。1998年、日韓両国・日中両国はそれぞれ新たな共同宣言を発表するのですが、「日韓共同宣言」では歴史問題について「痛切な反省と心からのお詫び」が表明されたのに、その後に発表された「日中共同宣言」では「深い反省」という文言しか入れられませんでした。この差異は日韓では民主主義や自由経済など価値観の共有ができているが、日中ではそうではないということによるものだと言われています。

今回の内閣改造以前に、若者向けの大衆紙ではありますが『華夏時報』では「小泉の参拝善後策:韓国をなだめて火力は中国に狙いを定める」という記事が出されています。日本が中国と韓国を区別して対応するのではないかという観測が中国にもあるようです。

果たして、この観測や麻生外相の示唆は現実のものとなるのでしょうか。

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2005年10月29日 (土)

胡錦濤の訪朝

10月28日より、胡錦濤が中国国家主席・中国共産党総書記の名義で朝鮮民主主義人民共和国に対する公式訪問を開始しました。

新華社報道によれば、胡錦濤は空港で書面での談話を発表し「われわれは、朝鮮人民が金正日総書記の指導下で本国の国情に合致した発展の道を模索し、強盛国家を建設するという事業の中で不断にさらなる成功を収めるであろうことを信じる」と述べました。さらに中朝両国は山水相依り、両国人民には友好的交流の長い伝統があるとしたうえで「中朝友好協力関係が両国と両国人民の根本的利益に合致し、本地区の平和安定に有利であり、発展と繁栄を促進するものであることを歴史と現実は証明している」と述べました。

相手国に向けた談話ですから、核問題などについて刺激するような言葉遣いをしないというのは当然としても、全体として政治よりも経済というスタンスが感じられます。

『参編』の記事は香港紙の報道に依拠して、北朝鮮にとって中国が援助を求めることができる国であると同時に、中国から朝鮮への投資が急速に増えており、中国にとって北朝鮮はビジネスチャンスの多い国であることを指摘しています。北朝鮮の資源が豊富なうえに、訓練された低コストの人材がいること、社会主義市場経済を経験した中国にとって現地の経済環境への適応がスムーズなことなどが有利な面であるとされています。

安全保障上の理由からだけではなく、貿易・投資など経済的な側面からも北朝鮮と結びつきを強化しようとしているようです。

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